滲出性中耳炎とは
中耳に滲出液が溜まって起こる炎症を「滲出性中耳炎」と呼びます。
あまり痛みはなく、気がつかずに放置されがちな耳の病気です。特にお子様は左右どちらかのみの場合、気づきにくく、また違和感に気づいても上手く大人に症状を伝えられないことがあります。
慢性化すると、難聴症状が治りにくくなり、小児の場合、学習障害の原因となります。
原因と症状
原因
滲出性中耳炎の原因としてもっとも多く見られるのが、急性中耳炎から移行するケースです。炎症が治まり滲出液となった膿が、耳管の機能低下によってうまく排出されずに中耳に留まり、再び炎症を起こして滲出性中耳炎となります。
その他、鼻すすり、扁桃肥大、アデノイド肥大、副鼻腔炎による鼻水なども、滲出性中耳炎を引き起こす原因となります。高齢の方は、加齢に伴う耳管機能低下が発祥の原因となることがあります。
症状
- 透明の鼻水が出る
- きこえにくい
- 耳が詰まっているような感覚
- 自分の発した声が響く
- 耳鳴り
など
滲出性中耳炎になった場合
症状が見られる場合には、年齢を問わず、できるだけ早くご相談ください。放置していると、難聴が治りにくくなります。
なりやすい年齢
お子様の中でも、幼稚園から小学校低学年の年代に比較的多く起こる病気です。
滲出性中耳炎を発症した年齢を調べたある調査では、10歳以下の年代がもっとも症例数が多く、次いで60代、50代、70代という年代で多く症例が見られました。
治療方法
もっとも優先すべき治療は、中耳に溜まった滲出液の排出です。
まずは薬物治療により、中耳の炎症を改善させながら、耳管通気により自然な排出を促します。改善しない場合は「鼓膜切開術」により鼓膜を切開して滲出液を排出させます。また合わせて、通気による陰圧(内部の圧力が外部より弱い状態)の解消、鼻や喉の炎症の治療も行います。
これらの治療を行っても再発が繰り返される場合には、より積極的な治療が必要になります。小さなチューブを挿入・固定することで、滲出液の排出と換気を促します。これを「鼓膜チューブ留置術」と言います。その治療の間は、感染を防ぐためにも、耳の中を触ったり、水が入ったりしないように注意しなければなりません。
なお、滲出性中耳炎は、症状がなくなったからといって完治とはなりません。鼓膜の健康状態、再発の有無を確認しなければなりませんので、医師の指示した治療を最後まで続けましょう。
治療期間
滲出性中耳炎の場合、治療期間はまちまちです。
2~3週間で自然治癒することもありますが、再発を繰り返すなどして鼓膜チューブ留置術を行った場合には、完治まで数年かかることもあります。鼓膜チューブ留置術を受けたあとは、1月に1度程度、チューブの様子を確認するための通院が必要になります。
お風呂やプールは可能か
滲出性中耳炎になったからといって、シャワーを浴びたり湯船に浸かったりすることに対して、それほど神経質になる必要はありません。
ただし、鼓膜切開術、鼓膜チューブ留置術を行った場合には、プール遊び(特に潜ったり)ができない場合もございます。
耳栓などの対処法もございますので、医師の指示に従っていただくよう、お願いいたします。
滲出性中耳炎の予防方法
滲出性中耳炎の予防で重要なのは、鼻、喉に炎症を起こさない、風邪をひかないことです。風邪症状が現れた場合には、できるだけ早く治療を受け、症状を長引かせないようにしましょう。
急性中耳炎との違い
急性中耳炎は、中耳に侵入した細菌・ウイルスの感染が原因により、激しい炎症を起こしている状態です。
対して滲出性中耳炎は、急性中耳炎の治療でしっかりと膿が排出できていなかったり、陰圧を原因として生じる滲出液が中耳に溜まっている状態です。
急性中耳炎の特徴的な症状である「耳の強い痛み」は、滲出性中耳炎にはほとんど見られません。