耳の仕組みについて
耳の構造は大きく3つに分けられ、外側から「外耳」「中耳」「内耳」とあり、外耳と中耳の境目に「鼓膜」があります。
この「中耳」と鼻を結ぶ管を「耳管」と言います。耳管は普段は閉じられており、物を飲み込んだとき、あくびをしたとき、鼻をかんだときなどに開放され内耳の圧力を調整してくれます。
その耳管が、さまざまな原因により常時開放されたり、ほとんどずっと開放されている状態を「耳管開放症」と呼びます。
耳管開放症の治療の際、まず取り組むのが生活習慣の改善と投薬です。それらで十分な効果が得られない場合に、「耳管閉鎖術」という手術を行うことがあります。
耳管閉鎖術とは
耳管開放症が認められ、保存的治療(生活習慣の改善、薬物治療、耳管の処置など)が奏功しない場合に行われる手術です。
メローセルと呼ばれる綿状のもので耳管を塞ぎ、耳管開放症に伴う症状を改善します。同時に、鼓膜チューブ留置術を行い、換気機能を代行させます。
耳管開放症に対して、即効性の高い手術です。
※風邪やアレルギーの症状が強く現れている場合には、症状が治まってから手術をする必要があります。
メローセルとは?
出血や滲出液の吸収除去を行うための、滅菌済みのサージカルスポンジです。人体親和性の高い素材でできているため、優しく、安全な処置が可能になります。
適応される病気について
耳管開放症
通常閉じられているべき「耳管」が、さまざまな原因によって常時開放されている、もしくはほとんどずっと開放されている状態を指して言います。
自分の声が大きく響いたり、反響してきこえたり、呼吸音がきこえたりする他、耳を塞がれたような違和感、めまい、難聴などの症状を伴います。
治療方法
鼻腔内から内視鏡を挿入し、耳管の鼻側の出口を観察しながら、耳管内に「メローセル」と呼ばれる綿状のものを約2~3ミリ大にして詰めます。メローセルが耳管内で粘液を吸収し膨張し、耳管を塞ぎます。同時に鼓膜内の換気を良くするため、鼓膜チューブ留置術を行います。
ほとんどのケースで、長期にわたって症状を抑え込むことができます。
手術後の注意点
手術の当日中
- 耳に水が入らないようにしてください。
- 激しい運動は控えてください。(特に水泳)
手術翌日以降
- プールなどでの潜る行為は、「耳栓をすれば大丈夫」と言われていますが、泳ぐことは可能です。ただし、潜水は禁止です。
- 手術後も、継続的に観察していく必要があります。症状が治まったからといって、自己判断で通院をやめてはいけません。
- 留置したメローセルが時間の形状に合わず脱落したときは、メローセルの形状を変えて何度か挿入し直す必要が生じることもあります。
- 留置したメローセルが体質に合わず耳漏や痛みを伴う場合には、抗生剤や抗炎症剤などで加療しますが、それでも症状が改善しなければ抜去することもあります。
- 「鼓膜閉鎖術」と同時に行われる「鼓膜チューブ留置術」で使用されるチューブが、治療過程で脱落した場合には、再留置が必要になります。
どのような症状の方が手術をするべきか
耳管開放症の患者様の中でも、生活習慣の見直しや投薬など、保存的療法で十分な効果が得られない場合には、耳管閉鎖術を検討する必要があります。