睡眠時無呼吸症候群とは
睡眠時に呼吸が止まってしまう病気のことを、睡眠時無呼吸症候群と言います。「Sleep Apnea Syndrome」の頭文字を取って、「SAS(サス)」と呼ばれることもあります。
眠っている間であっても、呼吸が止まることで身体には悪影響を与えます。血中酸素濃度が低下し、血圧が急上昇するなど、ときに命にかかわるような状態に陥ります。
また、昼間突然耐えられないような眠気に襲われることもありますので、車などの運転をなさる方はもちろん、日常生活におけるさまざまな場面でのリスクを伴います。
セルフチェックテスト
日中の眠気の強さを測定してみましょう。10点以上であれば、睡眠時無呼吸症候群が疑われます。検査を受けられることをお勧めします。
※このテストは、あくまで眠気の計測であり、睡眠時無呼吸症候群の診断ではありません。
もし、以下の状況になったとしたら、どのくらいうとうとする(数秒~数分眠ってしまう)と思いますか。最近の日常生活を思い浮かべてお答えください。
決して眠くならない | まれに眠くなる | ときどき眠くなる (1と3の中間) |
眠くなることが多い | |
---|---|---|---|---|
座って読書をしているとき | 0 | 1 | 2 | 3 |
座ってテレビを見ているとき | 0 | 1 | 2 | 3 |
会議・映画館・劇場などで静かに座っているとき | 0 | 1 | 2 | 3 |
乗客として1時間続けて自動車に乗っているとき | 0 | 1 | 2 | 3 |
午後に横になって、休息をとっているとき | 0 | 1 | 2 | 3 |
すわって人と話をしているとき | 0 | 1 | 2 | 3 |
昼食をとったあと(飲酒なし)、静かに座っているとき | 0 | 1 | 2 | 3 |
自身が運転する車が、渋滞で2~3分停まっているとき | 0 | 1 | 2 | 3 |
結果の目安
合計が10点未満 | 眠気は軽度です |
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合計が10~14点 | 病的な眠気です |
合計が15点以上 | 重度の眠気です |
10点以上の方は、検査を受けられることをお勧めします。当院では、CPAP(シーパップ)を使った睡眠時無呼吸症候群の治療を行っております。
原因と症状
原因
肥満
肥満傾向にある方は、喉の周辺にも脂肪がついています。気道が狭まり、無呼吸・低呼吸を起こしやすい状態だと言えます。肥満の方は、そうでない人と比べて、睡眠時無呼吸症候群の発症リスクが3倍になるという報告もなされています。
※ただし、痩せているから大丈夫、というわけではありません。睡眠時無呼吸症候群の患者のうち、約3割が肥満ではなかったと報告されています。
顎の小ささ・狭さ
顎が小さい、細い方は、気道が塞がりやすく、少し体重が増えただけで睡眠時無呼吸症候群を発症することがあります。他国と比較すると、日本ではこの原因で発症される方の割合が高いようです。
鼻詰まり
花粉症などのアレルギー、鼻炎などで鼻が詰まっていると、自然と口呼吸になり、いびきをしやすくなります。加えて、空気の乾燥によって気道が傷ついていると、無呼吸が起こりやすくなると言われています。
更年期
特に女性の場合、更年期(45~55歳)以降の方に、睡眠時無呼吸症候群が多く見られます。
呼吸中枢を正常に機能させるための「プロゲステロン」と呼ばれるホルモンの分泌量が低下することが、睡眠時無呼吸症候群の発症と関係していると言われています。加齢による喉や口の筋力の低下も、同様に発症リスクを高めます。
疲労・飲酒
疲れているとき、アルコールを飲んだときなどは、睡眠時に筋肉が弛緩しやすく、いびきが起こりやすくなります。ただ、そのとき限りのものであれば、健康な方でも起こり得ることですので、それほど心配する必要はありません。
症状
睡眠時無呼吸症候群の症状は、本人が気づけないものも多くあります。周囲の方からの指摘があった場合や、症状の有無を確認したい場合には、検査を受けられることをお勧めします。
呼吸の停止
「無呼吸」は10秒以上呼吸が止まることを指して言います。
いびき
無呼吸と合わせて、睡眠時無呼吸症候群の代表的な症状です。
特に注意が必要なのが、以下のような種類のいびきです。
- 仰向けのときに強くなるいびき
- 音に強弱があるいびき
- 朝まで続くいびき
- いびきをかいていて、突如息が詰まったように止まり、また突然再開されるもの
夜中に何度か目が覚める
無呼吸によって酸欠が起こり、苦しさで目が覚めます。夜中に2回以上目が覚める日が、週に3日以上ある場合には、「中途覚醒」と呼ばれ注意が必要です。
夜中に何度もトイレに行く
無呼吸状態によって、本来睡眠中には鎮まっているはずの交感神経が刺激され、トイレに行きたくなってしまいます。トイレの回数が増えることで、睡眠の質が低下し、日中の眠気にを誘発するケースも見られます。
起床時に、すっきり起きられない
睡眠時無呼吸症候群によって、睡眠の時間が確保されているにもかかわらず、その質が低下してしまいます。酸欠状態のために脳と身体が十分に休めず、翌朝も疲労感・倦怠感が残ります。
口内の乾燥
いびきをかく人は口呼吸になりやすく、口内が乾燥します。
唾液の分泌量低下、免疫力の低下を伴うこともあります。
日中の強い眠気
睡眠時無呼吸症候群によって慢性的な寝不足となると、日中に突然強い眠気に襲われるようになります。会議や運転など、本来なら適度な緊張が保たれている場面で、うとうとと眠ってしまうことがあります。日常生活に支障をきたすだけでなく、大きなトラブル・事故のリスクが高まります。
症状がみられる場合
睡眠時無呼吸症候群の発症は、不眠症、心筋梗塞、脳梗塞などのリスクを高めるだけでなく、日中の事故にもつながりかねません。
早期に検査・治療を受けましょう。
なりやすい年齢
男性の場合、30~60代の、いわゆる「働き盛り」の年代によく見られます。
一方女性は、更年期以降に発症するケースが多い傾向にあります。
治療方法
CPAP(シーパップ)
睡眠時無呼吸症候群は、「CPAP」での治療が有効です。ご自宅で、睡眠中に使用していただける治療装置です。
マスクを装着し、CPAP本体から空気を送り込みます。眠っている間、空気が適度な圧力を加えてくれるため、気道が確保され、呼吸しやすい環境を作ります。
CPAPは年々改良が加えられ、現在当院で使用するものは小型炊飯器程度の大きさで、泊りがけの出張などにも利用できます。
多くの方がCPAPでの睡眠時無呼吸症候群の治療を受け、症状の改善が見られています。
マウスピース
睡眠時無呼吸症候群の症状が、比較的軽度の方にお勧めの治療法です。
睡眠中にマウスピース(スリープスプリント)を装着していただくことで、気道を確保します。
比較的安価で受けていただけ、また患者様のご負担も少ない治療です。歯ぎしりの改善効果も見られます。
手術
睡眠時無呼吸症候群のリスクが大きいときは、手術を検討します。
肥大した扁桃腺の切除、上気道の拡大など、原因を探りながら適切な手術をご提案します。
鼻詰まりを原因として発症しているケースも見られますので、その場合は保存的療法や手術などで治療を行うこともあります。
治療期間
原因、症状の強さ、治療法の選択によって異なります。
睡眠時無呼吸症候群の予防方法
- 規則正しい生活を大切にしましょう。特に肥満傾向のある方は、食事と運動の両面から取り組むダイエットが有効です。適度な運動により、睡眠の質も改善されます。
- アルコールは、筋肉を弛緩させます。上気道が狭くなり、睡眠時の無呼吸が起こりやすくなりますので、過度の飲酒、就寝前の飲酒は控えましょう。
- 喫煙は、上気道の空気の通りを悪化させます。禁煙をお勧めします。